和紙でできた布はまるで、布でできた障子
『kami』は和紙100%を原料とした布です。その存在感を例えるなら、障子に似ています。
障子は、かつて襖や屏風などと同じように、簡単に、優美に、そして室内空間を"しつらえる"ものとして存在していた建具のひとつ。文字通り、紙一重で内と外とを仕切り、和紙のもつ優れた断熱性や保温性によって家屋を外気から守る役割を果たしていました。
そして外からの視線を遮ったまま、透過した光をやわらかく拡散し、優しくふくらみのあるものとなって空間と調和させ、私たち日本人の誰もが求めている"やすらぎ"をつくり出していたのです。
このような唯一無二の存在である障子の風情をそのままに、よりしなやかに、より手軽に暮らしの中に採り入れることができるように作られたのが『kami』です。
窓辺や部屋の空間に吊るだけで、深呼吸したくなるような安らぎと心の静寂を感じていただけることでしょう。
遮るのでなく、和らげる。家族の距離感さえも
間仕切る、とは本来、空間と空間を仕切る役割のものを指しますが、障子布である『kami』は、人の出入りや光を完全に遮断しない、とても不完全でルーズな存在です。
カーテンのように窓辺に吊れば、外と家の中を、部屋の中に吊れば空間と空間を、それぞれあいまいに、不完全に仕切り、季節のうつろいや住む人の気配を静かに映しとります。
見えるようで見えない、離れているようでつながっている。
そんな家族との心地よい距離感も生まれ、誰も孤独を感じることのないまま、一人ひとりが思い思いの時間を過ごすことができます。
紙とは思えないしっとりとした繊細な質感
和紙は、古来より神々に献上され、神聖なものとして扱われてきました。
その歴史が語っているように、障子布『kami 』には、凛とした品の良さが備わっています。
ただそこに吊ってあるだけで微妙な光の濃淡を奏で、時にさまざまな影をゆらりゆらりと映し出します。
その趣のある佇まいと美しさに、時々ハッとさせられることがあるんです。
質素=シンプルなものほど美しい。凛とした品の良さに感覚が研ぎ澄まされる
人工的なものを一切加えず、自然のものをそのままに織りあげた、いわば"生きた布"だからこそ、自然と醸しだされる風情に、感情を揺さぶられるのです。
余計なものをそぎ落とした質素で素朴なもの、現代でいうシンプルを極めたものを美しいと思う心、それは私たち日本人の誰もがもっている"詫びの精神"なのかもしれません。
『kami』が障子のような存在感を放ちながら、なぜこれほどまでにテキスタイルとしてのしなやかさを持ち合わせているのか。
コットンやリネンにはない艶やかさはなぜ生まれるのか。
それは、和紙繊維の独自製法に秘密があります。
気の遠くなるような手間ひまを惜しみなく
古来から和紙を細く切り裂いて縒(よ)り、糸状にした「紙撚(こより)」という技術があり、それを織り編みすることでさまざまな小物や衣類が作られていました。
『kami』に使われている和紙繊維「CURETEXⓇ」は、この「紙撚(こより)」の技術を応用し、さらに糸に強度と柔軟性をもたせるために天日干しで乾燥させたり、一度織った生地をほどいて再び糸にしたりと、研究しつくされた独自の製法によって、さらに強く、優れた特性を生み出しています。
※CURETEXⓇは株式会社キュアテックスの登録商標です。
自然の恵みをかりながら、植物が本来もつ力を損なわないよう丁寧につくられるため、大量生産はできません。熟練した技術者・職人たちの素晴らしい手仕事によって、しなやかさも加わった独特の風合いを出すことに成功したのです。
消臭、調湿、抗菌、UVカットなどの優れた機能
和紙繊維の原料は、多年性植物であるマニラ麻の葉鞘(ようしょう:葉の基部がさや状になり、茎を包む部分)から抽出した繊維です。
この葉鞘は茎を守るためにもともと調湿性や抗菌、紫外線カットなどの自然の機能が備わっており、その効果は加工された和紙にも引き継がれます。
さらに、独自の撚りを加えることで無数の孔のある状態が作られ、重層的に絡み合った複雑な構造が生成され、この構造が他の和紙糸にはない、優れた特性を生み出します。
【調湿性について】
【消臭性について】
【抗菌性について】
よくある抗菌、消臭、UVカットなどの機能性のレースカーテンの多くは、布を専用の薬に漬け込んだり後加工したりして機能を付加しますが、『kami』は和紙そのものが本来持っている自然の力を、優れた技術力で最大限引き出し、それを可能にしているということです。
洗えば洗うほど機能が向上していく、という不思議
しかもこれらの機能は、同じ自然素材の麻や絹、綿よりも優れていて、抗菌性にいたっては、洗濯すればするほど機能が高まるという調査結果もでています。(上のグラフ参照)
赤ちゃんにも。世界最高水準の安全性
和紙の布というと、紙らしいハリ感や、ざらざらした肌触りをイメージする人も多いと思いますが、『kami』は一見、綿のようなやさしい風合いを感じつつも、吊ってみると分かるのですが、絹のように繊細で艶やかな独特の表情をもっています。触ってみてもチクチクするような違和感はありません。
実は赤ちゃんの肌着レベルの安全性を認められているのです。
300を超える有害化学物質を対象とする分析試験にクリアした、世界最高水準の安全な繊維製品の証として「エコテックスⓇスタンダード100」を認証。
※エコテックスⓇは、エコテックス®国際共同体の登録商標です。
生後36カ月未満の乳幼児の肌に触れる繊維製品を対象にした最も厳しい認証クラスです。
カーテンや間仕切りはお部屋の中で大きな面積を占めるもの。だからこそ体にやさしい素材を使っていただきたいと考えています。
次の生循環ステージへと生まれ変わる
特殊な製造方法で作られる障子布『kami』が持っている、土に敷くと数か月で土に還るという生分解性をもっていること。
さらに 微生物バイオマス量を増加させる力ももっていて、土を微生物いっぱいの健康な有機の土に変えてくれる働きもありあす。
例えば野菜を植えた畑にこの布をかぶせて放置しておくと、土壌微生物が増え、活性化し、栄養価の高い作物(シシトウやブロッコリーなど)が育ちます。
捨てずに回収して次の循環ステージへ。「使う→生かす→還る→育てる」の好サイクル
これらの特徴を生かし、私たちは『kami』を次の命につなげる循環ステージへと活用することにしました。
福井県鮎川町で私たちが保有する「カズマの森」で、天然染料の原料となる植物を育て、新しい命を育む肥料としてこの和紙布が使われるのです。
持続可能な素材を使ってものづくりをする。それだけじゃなく、捨てずに次の命のエネルギーに100%生まれ変わる。使う→生かす→還る→育てる の循環サイクルが確立された『kami』を皆さんと一緒に育てていけたら、そう願っています。
人や自然と共生し生き続ける"生きめぐる布"
障子布『kami』のコンセプトは、「生きめぐる布」。
"生き廻る(いきめぐる)"とは、生きながらえ、生き続けることの例えで、今昔物語にも登場する、日本古来からある美しい言葉です。
なぜ「生きめぐる布」なのか、それは・・・
・人と同じように呼吸し、日本の気候と風土に合った機能を発揮し続けることができる
和紙は土壁や畳と同様、水を吸ったり放出したりする、生きた素材のひとつ。調湿・断熱・保温・防虫など、そのたくましい自然の力によって、高温多湿の日本の暮らしを長年支え続けてきた素材です。
・本来の役目を終えても土に還って新たなエネルギーの生循環を生みだすことができる
『kami』 に使われている和紙糸は、和紙をテープ状に裁断し、独自の製法で糸にしたもので、この特殊な糸で織られた布は、土に敷くだけで数か月で土に還るという優れた生分解性をもっています。
・1300年以上にわたり用途・文化ともに日本の暮らしになくてはならない存在として生き続けている
散りゆく桜の無常観、古めかしい道具に感じる趣、そして和紙を透した灯篭の光に想う風情。私たち日本人の誰もがもっている"日本の美意識"そのものが文化となり、今に生き続けています。そのDNAをしっかりと引き継いでいるのが『kami』なのです。
◆商品詳細について◆
『kami』は、3色展開で、生地の厚さも、薄地と厚地の2種類をご用意しています。
1・無垢 (むく) ※薄地
神秘的なほどに純真無垢な白。絹のように繊細でしっとりとした質感。
2・白茶(しらちゃ) ※薄地
コーヒーの搾りかすで天然染めしています。
フラットな光では薄いベージュのような色合いに見えますが、光のコントラストによっては土壁のような深みのある表情も愉しめます。
3・白茶(しらちゃ) ※厚地
こちらも珈琲の残りかすで染めたお色です。
やや厚地ですが、ほどよく光を通します。
4・灰藤(はいふじ) ※厚地
アロニアで天然染めしています。
もともと紫は高貴な色。和紙との相性の良い、洗練された雰囲気があります。
※白茶、灰藤はいずれも天然染めのため、多少の色ムラが生じる場合がありますが、それも生きている証拠です。独特の風合いとしてお愉しみください。
同じ布で作る「共紐」をつないで生地を吊ります
通常のカーテンに付属されているプラスチックフックは付いていません。
生地の上部に8つのホールがあいていますので、その穴に、セットで付属している「共紐」を通して吊ってください。
【共紐】
本体の布と同じ布を使い、高い縫製技術によって幅4mmに仕上げたシンプルな紐です。生地1枚につき共紐は1セット付属していますので、別途購入の必要はありません。(幅4mm×長さ40㎝×8本)
もっと個性的なコーディネートを楽しみたい方に
吊りスタイルの応用として、別途3種類のパーツもご用意しました。
※オプションでのご購入になります。
1・革紐
色合いが徐々に濃くなっていく、本革本来の経年変化を楽しめます。(幅3mm×長さ40㎝×8本)※本体生地1枚分。
2・針葉樹紐
針葉樹の樹脂が原料。よく見ると白っぽい植物の繊維を感じる環境にやさしい素材です。(幅3mm×長さ40㎝×8本)※本体生地1枚分。
3・S字フック
レールのランナーを使って吊るす場合に使用。短時間で楽にセットできます。(幅15mm×高さ3㎝×8個セット)※本体生地1枚分
※「S字フック」は小さいため、突っ張り棒には使用できない場合があります。
生地サイズの選び方
『kami』は、オーダーでなく「幅150㎝×丈6サイズ」の既成サイズ展開です。
丈6サイズは、120㎝、140㎝、180㎝、200㎝、220㎝、240㎝。
生地につなげる紐の長さを調整すれば、どんな場所(窓)にもお好みの長さに吊ることができます。
【カーテンとして使用する場合のサイズ選びの目安】
※レール幅が150cm以下の場合は、生地の端を折りたたむことで調整可能です。
とはいっても、サイズも吊り方も自由。
『kami』には、カーテン、間仕切り、といった、何に使うという概念自体がありません。
あなたのアイディアで、どこにでも、どんな風にでも吊ることができて、むしろその "あそび" こそが、空間を豊かにするエネルギーになります。
生地の両端に2本だけ紐を通して、左右アシンメトリーに吊ってみたり。
左右で生地の色を変えてみたり。
窓に吊る場合も、少し生地を引きずるほうが生地のしなやかさが生きてきます。
商品の仕様
布の両サイドには1つひとつ表情の違う、天然あこや貝のボタン。
このボタンを、裏側についたボタンループに引っ掛けると、さまざまなスタイルのアレンジが愉しめます。
生地をたくし上げることができるシェード風のアレンジ。
タッセルのように生地をまとめることも。
無駄のない質素なものにこそ、美しさや奥深さがある。最小限のもので心豊かに暮らすという選択
人工的に作り出したものではない、自然が作り出した無垢で質素なものを美しいと感じるのは、自然のものが本来もっている強くたくましい"エネルギーに惹かれるから、だけではありません。
極限まで余計なものをそぎ落とした、シンプルなものから感じる「風情」であったり「哀愁」であったり、それを感じている間に流れている「時間」であったりします。
それは、効率や利便性を追求した暮らしの中でも、私たち日本人が心の底で確かに求めているもの。
たった1枚の "生きめぐる" 布と暮らす中で、さまざまな移ろいゆくものと重ねながら、日々、小さな喜びを見つけたり、深呼吸できるような豊かな時間を過ごしていただけたら―。
それが、私たちの願いです。